2014年3月17日月曜日

おはようさん 2014.3.17.

去年秋から在宅往診していたおばあちゃん患者さんが昨夜、亡くなったと連絡がありました。 元々は、顔から転けて手足にしびれが出て・・・ 近くの病院の整形外科では異常なしと言われ、うちに来られた患者さんでした。 初診でムチ打ち外傷による頸随損傷が明らかだったので、ちょいとステロイドを服用していただき、数週間で完治しました。 去年の5月に夫を亡くされて、ひとりぼっちの生活をされていました。 週1回の往診時にはいつも「もう死にたい」と嘆いていたおばあちゃんでした。 夕診終わり頃に「しんどい しんどい」と電話してきて、お宅に伺うと・・・けっこう元気だったなんてこともちょくちょくありました。 だから、昨日亡くなったと聞いた時、スタッフ共々、孤独死したんじゃないかなって思ってしまいました。 家族の方から夕方に連絡があり・・・ 昨日は久しぶりに息子・娘たちがばあちゃんの家に集まって、一緒に食事をしたそうです。 ばあちゃんもよく笑っていて、とても楽しそうだったそうです。 夜になり、なんだか様子がおかしいことに気づいた息子さんが救急車を呼んだけど・・・救急隊が到着した時にはすでに亡くなっていたそうです。 普段の往診時の血圧や脈拍、酸素濃度、肺雑音などは正常でしたから、死因は「急性心不全」だけど、「天に召された」のが本当の死因だったのでしょう。 思えば、最幸の死に方ですよね。 旦那さんが亡くなってからはずっと「ぼっち飯」で寂しい日々だったけど、 早く死にたい 早く死にたい が口癖だったけれど、 人生の最後の日に、子供たちとその家族が集まってきてくれて、ワイワイと賑やかに食事をして、久しぶりに笑って、こころが笑顔に充たされて、ポックリ死んでしまう。 ずっと真っ暗闇の日々を過ごしてきて、昨日という最後の日に、大きな大きな輝く太陽の日の出を目にして・・・そのままお日さまの中に吸い込まれて 逝ったみたいです。 真っ暗闇の中を歩いてきたからこそ、日の出の美しさ、ありがたさ、幸せは天下一だったことでしょう。 天職を果たし、天命を果たし、ソウルメイトの腕に抱かれて・・・そんな充実感の中で死を迎えるのもいいけれど、 平々凡々に生きて、生きがいは子供たちで、贅沢も趣味も持てずに、ただ死んでいくとしても、最後の日に笑って、こころ楽しく、大切な人たちに囲まれて、静かに死を迎えられたら・・・こんな死に方もええよね 最幸だと思ったのでした。 お知らせ 次回 天満満天堂Live 光の前世療法グループワークは 6月8日(日曜) 午後1~4時 に開催することに決定! しました\(^O^)/ 前世物語 「ところで先生、先生はなぜアルコール中毒に詳しいのですか? 先生は全然お酒を飲まないし、脳外科医でしょう・・・私には先生とアルコール中毒の患者さんとの接点がわからないのですが」  こんな質問が出来るのは、この世の中で私だけです。先生は笑いながら教えてくれました。 「お酒は飲まないなぁ。一番大酒食らったのは大学に入った夏だったなぁ。ポニーテールがとってもよく似合う彼女に見事にふられちゃったんだよ。あれはね、木の床がギュウギュウ鳴る旭屋本店で本に埋もれてインクの匂いにラリッていた時だったなぁ、目の前をマヤの太陽のような笑顔のポニーテールが彼氏と腕組んで通り過ぎていったんだよ。あの男、カッコ良かったなぁ、ちょっとスペイン人ぽかったけど・・・。そう、ポニーテールがまるでバイバイするように楽しげに揺れていたなぁ。あれ以来、ポニーちゃんには会っていないなぁ・・・それは誰? かは言えないけどね、美子さんもよく知っている女性ひとだよ。高校時代は何だか張り合うところもあって、うまく気持ちを伝えられなかったけれど、少年の心の中ではホント、女神さま! っていう感じの人だったんだ。そう封筒に桜の花びらが入っていたなぁ・・・あれ以来、あまり飲まなくなったよ。だっね・・・」  先生はニコニコしながら、わざと視線を背けました。 「え? 先生、やけ酒飲んだの? そんな・・・」  言葉に詰まった私を無視して先生は話し続けました。 「脳外科医にはあんまりお酒の豪傑はいないなぁ。忘年会でも、先生方は珍しくあまりお飲みになりませんね、とよく言われるからね。まぁ、たまに突然変異はいるけどね。脳外科医に酒豪が少ないのは、どうしても夜間の呼び出しが多いからだと思うんだ。一人前になるまで、そう初めの十年は年中無休のオンコール体制だからね。夏は外傷、冬は脳卒中、動脈瘤は年がら年中・・・ともかく手術、手術、手術だろう。この手術がたいてい夜中だったんだ。術後の管理でも、しょっちゅう呼び出されるからね。気を抜けるときなんて、なかったんだ。お酒でストレス発散はいいけど、飲んでも酔うことは許されない雰囲気があるんだな、脳外科には。そう、脳外科医としてのプライドだね。術後もね、例えば整形外科とか外科のように教科書通りにはなかなか行かないんだ。なにせ脳というコンピューターが一時的に壊れちゃっているわけだから、身体がバラバラに機能しちゃうんだよ。例えばね、胃に食べ物が入っていないのに、胃酸をコントロールする指令が来ないものだから胃酸がドンドン分泌し続けて、あっという間に胃に穴が開く、なんてことがよくあったんだよ。外科に出向して胃潰瘍の手術くらい一人で出来るようになっておくことが新米脳外科医に求められていた時代だったからなぁ」  先生は昔話にふけるおじいちゃんのような顔で続けました。