2013年5月11日土曜日
おはようさん 2013.5.12.
ニナパパ(蜷川幸雄:ニナミカのパパだからニナパパ)の「ヘンリー4世」を観てきました。
4時間のシェークスピアの大作です。
ニナパパはいつも時間と空間を自由に操る超越5次元の演出を見せてくれますが、今回はおとなしめの普通の演出でした。
それでも舞台の空間美はさすがです。
モノクロ写真に通じる光と影の使い方にハッとするものがありました。
あらすじはこちらへ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヘンリー四世_第1部
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヘンリー四世_第2部
第一部は「死と名誉」がモチーフとなりそうに思えて、これはシェークスピア版ホメロスか!と勇み立ちましたが、何だか斜に構えて「死と名誉」を称えただけで終わってしまいました。
ストーリー的には、ヘンリー4世の長男 ハル皇太子は放蕩息子で悪党たちとつるんで悪さばかりしていて。そこにヘンリー4世への反乱が起こり、ハル皇太子は戦場で大活躍します。幾度もの戦いを切り抜け、反乱軍を制圧します。そしてヘンリー4世の死を経て、ヘンリー5世となります。
皇太子時代の悪党のボスで大親友の サー・ジョン・フォルスタッフはずっとハル皇太子と共に(いろいろ悪党をしながら)戦ってきましたが、ヘンリー5世として戴冠した後には、この悪党親友を法の下で裁いて劇が終わります。
このヘンリー4世がシェークスピア劇の中でも人気作品であるのは、厳格であり威厳に満ちた国王ヘンリー4世の対極としてのフォルスタッフの人間臭さの面白みでしょう。
そんなヘンリー4世を観ながら、このモチーフは? と思索しました。
皇太子ハルは、自由奔放な放蕩息子から戦士へ、そして厳格な王へと変わっていきます。
第一幕のクライマックスは、反乱軍の若き戦士 ホットスパーとの一騎打ちですが、このホットスパーは「変われなかった」代表人物でもありました。
「変わる」「変わらない」
「変われる」「変われない」
誰の人生にでも節目があります。
自分を変える・変われるチャンスです。
皇太子ハルは人生の節目で、生き方を変えれました。
敵将ホットスパーは自分を変えられませんでした。変わらなかった。
人生の節目は、それまでの環境(仕事・住まい・立場 等々)が大きく変わりそうな時(ちょっと前に)に現れます。
環境の変化に自らを「変われる」かどうか?
「変われない」と、環境の変化は津波のように押し寄せて来て、流され、飲み込まれて「変わって」しまいます。
そう、「変われない」=「変わる」です。
環境の変化・時間の津波にのみ込まれてしまうと、自分の意図とは無関係に、気がついたら「変わって」しまっています。
もちろん、そこには「生きがいの創造」はありません。
環境の変化に自らを柔軟に「変えて」いける人は、変化や時間に飲み込まれることなく、まるでサーフィンするように、押し寄せる変化と時間を楽しめます。
そんな「変われる」人は、傍から見ると「変わらない」人にも見えます。
この人は元々こんな人だよね。
昔から変わらないよね。
外見や仕事やステータスがいくら変わっていても、昔から知ってる人が見ると「変わらない」人に見えます。
それは、自分という根本、自分らしさは「変わらない」けど、環境と時間の変化に「変わっていく」柔軟性と創造性を持っているからでしょう。
「変われる」けど「変わらない」人は流行に流されません。
「変われない」から「変わる」人は流行を追い続けます。自ら「変われない」から、流行に依存しなければ、「自らの存在感」自体が消滅してしまうからです。
高級ブランドバッグとベンツに代表されるかな?
そんなことを考えながら、私はやっぱりホメロスやギリシャものが好きですよ♡ と気づいたヘンリー4世でした。