2013年4月30日火曜日
おはようさん 2013.5.1.
昨日の午後は在宅往診の前後に少しフリーな時間が取れたので、今年の梅と桜の写真をスキャナーしました。
思ったほど良い写真がなくて、ちょっとがっかりです。
理由はいろいろ。
天気が悪かった、露出計の電池切れで光量不足だった、なぜか青みがかった・・・やっぱり下手くそやなぁ。
悪い理由はいくらでも思いつきます。そして結局、自分を責めちゃいます。
だったら、デジタル写真に戻れよ・・・って誘惑の声も聞こえてきます。
でも、デジタルでは自分らしさ、自分の想いが表現できないと思ったから、難しいフィルム写真の世界に飛び込んだのですからね。
うまい写真って何でしょう?
たくさんの人たちを驚かせる&感動させるのなら、デジタル写真です。
Photoshopがどんどん進化して、現実にはありえない豊かな色彩の写真たちがネットに目白押しです。
犬・猫・鳥などの動物に、解剖学的には不可能なポーズをとらせている写真もあふれかえっています。
犬&猫が満面の笑みを浮かべていたら、おおくの人たちは感動し、こころ癒やされます。
ウソだけど結果オーライだから、それも良しです。
デジタル写真は、目には見えない豊かな色彩と見たこともない被写体・モデルへの驚き&感動がうまい写真のバロメーターになりつつあります。
仮想現実だったものがどんどん現実のものになりつつあります。
現実だと刷り込まれていきます。
みんなが現実だと思い込むと、それが現実になる・・・恐ろしさを感じてる人はいますか?
私はそれが怖ろしくて、デジタル写真に距離を置いています。
目の前の自然の赤と白と紫のチューリップたちを眺めながら、
これをデジカメで撮れば、すごく鮮やかで生き生きとしたチューリップに変身します。
フォトショで簡単に、青とピンクと金色のチューリップに変身させることだってできます。
そんなデジタルなチューリップさんたちを思い浮かべながら、
そこに本物の「生」は宿っているのかしら?
私には「生」は感じられません。「死」も感じられません。
「今を切り取った」「空気感さえ切り取った」というキャッチコピーに、
「生」も「死」のないじゃん? 生きてないじゃん? って突っ込みたくなります。
デジカメの未来を辿っていくと、そこにはアンドロイドや人型ロボットが見えてきます。
今は最初期のデジカメ程度かもしれません。
人間の方がはるかに優れています。
でも、デジカメや携帯電話の進化を思い起こしてみると、
あっという間にアナログなカメラや固定電話を凌駕してしまいましたよね。
いつかアンドロイドや人型ロボットが進化して、アナログな人間を凌駕してしまう日が来るでしょう。
自分の記憶も思考パターンも七情パターンも、こころのパターンまでも全部、人工頭脳にコピペできてしまえば、もうひとりの自分がアンドロイドや人型ロボットとして生まれ変わります。
もうひとりの人工な自分・・・生の人間と比べものにならない高感度の目と耳を持っていて、瞬発力も持久力も驚異的で、人との将棋やチェスは連戦連勝、決して忘れることのない記憶力を持ち、宇宙船の大気圏突入計算も暗算でポイ! 世界中の言葉を流ちょうに話し、テレパシーならぬ無線通信で世界中の誰とでもデーター通信できる・・・
そんなデジタル世界が来たら、生の人間の自分を捨てて、デジタルな自分へ生まれ変わったように乗り移る人ばかりになるんじゃないのかしら?
そう、フィルムカメラがデジタルカメラに取って代わられたように。
そんな未来社会が来ても、私は「生」と「死」を彷徨う生身の人間でいたいな。
きっと神さまも、生身の人間を見ていたいと思うから。
「生」と「死」の間に、本物の「美」があるように思います。
それはデジタル世界よりも色褪せています。
解剖学や生理学、物理学的な制約の下にあります。
ありふれた日常の中だから目立ちません。当たり前の光景だから感動もありません。
そんな小さくも儚い「美」ですが、神さまたちが愛でてくれる「美」だと思います。
うまい写真って何でしょうか?
たくさんの人たちが感動する、幸せな気持ち、こころ癒やされる気持ちになる写真も確かに良い写真です。
でも私は、一枚の写真の中に「生」と「死」と「美」のストーリーが浮かんでくる写真が好きです。
その写真を見ながら、勝手にどんどんストーリーが浮かんでくる時、
「生」と「死」が美しくシンクロしながら、何かを生み出そうとしているように感じます。
そう、まるで神社の注連縄のように陰陽がねじり合って、ひとつになり、そこから雷を轟かせながら神々が生まれ出るような衝撃にこころ踊ります。
ピントも構図も手ぶれも色飛びも・・・もっと大切なものに繋がっているので、どうでもよくなります。
マイナス・悪いところだらけだけど、そこに「生」や「死」や「美」があれば、もうどうでもよくなります。
上手な写真を撮るために、ここを治しましょう・これに気をつけましょう・こうした方がいいですよ・・・みんなにいいね! 上手だね! すごいね!って言ってもらえますよ。
そんな欠点克服大会&有名写真コピペ大会も良いでしょう。(私は嫌だけどネ)
これ、こんな情景が浮かぶよ。
なぜかリンゴパイが食べたくなっちゃった。
ご無沙汰なあの人の声が聞きたくなったよ。
そんな支離滅裂な褒め言葉こそ、写真上手になる(写真上手を手助けする)神話だと思います。
(これは子供の絵を見た神さまの褒め方でもあります)
なぜフィルム写真にこだわっている? そんな自問自答に神さまから振ってきた答えでした。