2014年7月9日水曜日

おはようさん 2014.7.9.

今日の漢方診の新患さんは在日30年あまりの中国女性さんでした。 日本語はダメということで、娘さんが通訳してくれました。 どこの病院に行っても、どんな検査をしても「異常なし」と匙を投げられた発作性の慢性頭痛と胃痛が主訴でした。 舌は黄膩が腎脾にへばり付いた紅舌で。 脈は沈。アーユルヴェーダ脈診では幼少期からの虐げられるような抑圧が続いていて、肝鬱気滞が「川砂が沈殿するかのように」心に積もり積もって、火山が爆発するように心衝胃犯するらしい・・・娘さんに尋ねると、父親も夫も絶対君主タイプだったそうです。なるほどね・・・。 腹診は、腎虚なし=今でも現役で肉体労働中・・・ただ夢分流打診後に探ると、さすがに年齢的な腎陽虚&腎陰虚がありました。ただ、今は問題になりませんね。 胃土は実でちょっと虚熱があるかな・・・梅雨ですから湿痰もウロウロしてました。 左>右で肝相火に肝鬱気滞が沈み込んでいました。 帯脈は臍上の位で問題なし。帯脈上の方が実熱ぽい感じで。 鳩尾まわりの圧痛なし。柴胡の証なし。 面白かったのは・・・ 発作性の胃痛が起こったら、民間療法で胃の辺りに自分で傷をつけて、カンカンに火を入れて、それをその傷の上に被せて、血を吸い出しているとのことでした。 それって 刺絡&吸角やん!! (°0°)(°0°)(°0°) お腹を診ると、確かに右不容(ST19)に小指頭大の傷跡が・・・うぉぉぉ 陽明胃経やん!! 不容(ST19)の効能:おう吐 胸脇苦満 心悸亢進 胃痙攣 肋間神経痛 胃症状 胆石症 咳嗽 吐血 おそるべし 民間療法(^_^;) 不容穴の刺絡で、心衝胃犯した氣を下げ降ろしていたのですね。すごいなぁ。。。 何千年も前の人たちも、こうやって経験則で鍼をしたり灸をしたり刺絡したりしていたんでしょうね。 なんだか神農大帝さまからの時空を越えた使者のように・・・このおばあちゃんが見えました。 そんなビックリに感嘆しながら・・・ 今日の治療は背候診で「痛っ!」があった至陽(GV9)へ鍼を1本。 命門(GV4)が虚していたので、ここにお椀灸をして(督脈の鍼のバランサーの意味も) 処方は、梅核気がはっきりしていたこともあり、茯苓飲合半夏厚朴湯を主に。頭痛&胃痛発作時に大承気湯の頓用で。 ちょっと遠いところの方だったので、本当は鍼灸(刺絡)に通っていただけると完治に持って行けるのですが、まぁ ボチボチと治していきましょう。 漢方薬だけの専門医で経穴経絡の知識のある先生は少ないと思います。 (以前、通っていた中医学講座での印象から・・・) 経穴経絡を知らなければ、腹診しても「何の傷? 意味 わかんな~い! どうせ民間療法だし、ほっときましょう!」で終わってしまうでしょう。 鍼を学んでいるからこそ、「不容やん! 陽明胃経やん!! すご~~い!!!」と感動できたわけです。 刺絡の成書を読んだ後だったので、「刺絡&吸角やん! すご~~い!!」とワクワク出来たわけです。 本当にステップ バイ ステップ。 勉強すれば、その応用問題が降ってきて、また次のステップが見えてくるという善き流れの中にいることに、こころから感謝&感謝の外来でした。 前世物語 「先生、とってもスリムになりましたね」 「うん、君のためだよ。君とのせっかくの夜に腹上死しちゃったら心残りになるからね」  彼奴アイツはいつまでたっても「はぐれ雲」のままですね。刀の代わりにメスを抜くことはもうありませんが・・・いいえ、毎日、心のメスを抜いている魂の外科医になっていたのです。そんなふうに彼を許せる気持ちになった私は彼のいい恋女房になれるかしら・・・そんなことも思いながら先生と楽しくブランチしました。 「先生、本当にいい身体になってきたわね。肩なんか逆三角形モドキじゃぁないの。先生、ホルモン補充療法を自分で実践していると言っていたけど、確かに効果があるわね。ねえ、先生、私もホルモン補充療法をやってみようかな?」  私は前々から気になっていたことに話を向けました。 「ホルモン補充療法は不妊症や更年期障害の治療として日本でも受け入れられてきた、と言ってもいいだろうね。産婦人科関係の病院の生き残りはこれからの少子化の時代、この分野にかかっているからね。ただ、こういったホルモン補充療法はいずれ内科一般にも広まってくると思うんだ。それもきっとグローバル化の波にのって、ほとんどの医者が予想している以上のスピードで広まってくるよ。技術や知識のグローバル化によって何がもたらされてきていると思う? 善悪、正邪は考慮しない『神の目』で見てごらん・・・見事な二元性だよ。持つものと持たざるもの、ただそれだけだよ。ここでは数が問題じゃないんだ。二極化が際立ってきているということなんだ。お金の話だけじゃないよ、技術と知識を使えるかどうか、がはっきりしてきているんだ。そんなグローバル化が健康や寿命にも及んできていると言うことなんだ」  私はクロワッサンを口にしました。フレッシュ・バターの香りが耳元まで広がっていきます。 「ここのクロワッサンはいけるだろう? 何だったらおかわり、持ってこようか?」  私がニッコリするよりも早く、先生は立ち上がっていました。 「彼がこんなに議論好きだとは思わなかったわ。確かに大昔から児童会活動がやたら好きで、将来は政治家になる! なんて言ってたこともあったっけ・・・。でもあの性格では政治家は無理だわね、正直過ぎるもの。でも・・・これからどうなるかなんてわかったものじゃないから、スピリチュアルな新しい時代が展開したら意外と意外かもね・・・フフフッ・・・そしたら私がファーストレディか・・・」  昨夜の寝不足が私をハイテンションにしています。私はジャクリーンとなって楽しい空想に耽ふけりながらカフェオーレを楽しみました。  先生が目の前にクロワッサンを置いてくれました。ちゃんとイチゴが添えてあります。かわいい伊達者なんだから・・・。