2014年6月5日木曜日

おはようさん 2014.6.4.

今夜は、深野師匠に謡いのお稽古をつけていただきました。 お稽古を始めて1年半。「竹生島」が終わって、今日から「経正」です。 今日も深野師匠のお手本を聞きながら、日本語の美しさに身も心もとろけてしまいました。 世阿弥誕生650年。 この「経正」も何百万、何千万人もの謡い手たちによって、言葉のひとつひとつが最も輝くやうに磨き上げられ、最も美しく聞こえるやうに練り上げられてきたのでしょう。 日本人なら、心に染み込んできて当然ですよね。 謡いを始めて気づいたことがあります。 世代&時代を超えて流行している曲(歌謡曲もJ-POPも含めて)の歌詞は、どこか謡曲に似ています。 言葉に美しさがあり、節回しが自然と心地よいのです。 ヒットメーカーな作詞家さんたちは皆、隠れ謡曲師範じゃないの? なんて思っちゃうくらいです。 私の謡曲の夢は・・・ いつか年老いた時・・・ ボケてしまって紙オムツ&車イスになっていても「あのおじいちゃん、機嫌がいい時はいつも、何かを謡っているね」とか・・・ お仕事もリタイアして、日だまりのベンチにのんびり腰かけながら朗々と何かを謡っている姿とか・・・ 今日は死ぬ日の最後の最後の時に・・・ひとり静かに、背中を丸めながら、お気に入りの何かをゆっくり&ゆっくりと謡っていて・・・声が消えたら・・・微笑みながら旅立っていた・・・とか・・・ へぇぇ そんな想いが自分の中にあるんだって気づいた夜でした。 その時、何を謡うのか? 時世の謡を見つけるまで、私の謡曲修行も続くのでしょう。 (旅立ちの時、お金も権力も財産も持っては行けないけれど、とびっきりの一謡は、あの世へ持って行けそうな気がします。その一謡があれば、いつでもこの世に残してきた愛や信や友に繋がることも出来そうな気がします。それに・・・とっても格好いいし、美しいでしょう(;^^)ヘ.. というわけで、今年も京都能楽大連吟が開催されます! 本番は12月23日(祝日) 今年の会場は、池坊会館2Fホールです。 もちろん私も(大きな顔して(^^ゞ)参加しますよ。 ベートーベンの第九よりも簡単です! 何より「能の謡いを始めたよ」という超弩級の話題性! 趣味「能の謡い」と書くだけで履歴書が紋付き袴姿の奥ゆかしい日本美人に大変身! そして・・・超人見知りな私とお友だちになれちゃう!(どこが特典やねん(;^^)ヘ.. 詳細は能楽大連吟HPをご覧下さいね。 http://dairengin.com 前世物語 「メリーさんの人生で肝炎の原因となった場面に移ってください。メリーさんはいくつになって何をしていますか? 何が起こりましたか?」 「三十三歳になっています。静かな夜です。暖炉に火が燃えています。お酒の入ったグラスが見えます。家の中は暖かそうですが誰も傍にいません。私ひとりです」 「今、どんな気持ちですか?」 「もう幸せじゃありません。どうしよう、と言うのか、困っている、悩んでいる感じです」  雅子さんの声が沈んでいきます。 「何を悩んでいるのですか?」 「何か今、水が渦巻いている中で男の子が溺れていて、私に助けを求めている場面が見えます」 「それは一体、何ですか?」 「自分の子供が溺れて死んじゃったんです。金髪で青い目がきれいな男の子でした。まだ七歳だったんです。私のボブ・・・。ごめんなさい、ボブ・・・」  雅子さんは激しく泣きだしました。 「ボブは、今のあなたが知っている人ですか?」 「誰だかわかりません」 「それはあなたが何歳の時に起こった事件ですか?」 「二十八歳の時です。私は幸せな家庭の主婦でした。その日、ちょっと目を放した隙にボブは一人で川に行ってしまいました。あの子は前から川遊びをしたがっていました。でも私が止めていたんです。だってあの川岸はとても滑りやすいんですもの・・・。私がもっときつく叱っていたら、あの子はあの日、川には行かなかったんです。私のせいです、私が悪いんです・・・」 「ボブのことを知った時、あなたはどうなりましたか?」 「お皿が手から滑り落ちました。お皿が割れていくのをじっと見ていました。時が止まりまた・・・。全身の力が抜けて冷たくなっていきました。私は気を失いました」 「ボブの遺体はあがりましたか?」 「川底に沈んでいました。水色の顔になっていました。家まで担荷で運ばれてきました。私はそれを呆然と見ていました。涙も出ませんでした」 「その時、何を思っていましたか?」 「取りかえしのつかないことになってしまった。何も考える余裕などありませんでした。私はゆっくりとボブの亡骸を抱き上げました。肌は透き通っていました。でも目に光はありません。そう、私は昨夜も眠ったボブをこうしてベッドまで運んだのです。手がダラリと落ちて・・・。かわいい寝息が止まっています・・・。ボブはどこに行ってしまったの」  彼女は激しく泣き続けました。 「夫はあなたに何か言いましたか?」 「夫も慌てていました。何か私に言って出ていきました。何となく責められている感じが私の心に残りました」 「お葬式にまで進んでください。どんなお葬式でしたか?」