2014年6月18日水曜日
おはようさん 2014.6.17.
今日の夕診の終わり頃、1年前に舌癒着症のオペをした小学生がやって来ました。
オペをしても夜尿症と口ポカンと集中力のなさは変わらないとのことで、再癒着したの?ということで再診されたのです。
舌癒着症の方は完治していて、再癒着もありませんでした。
この方は術後からあまり症状の改善がなかったので、漢祥院の蓮風先生に鍼治療をしてもらったら・・・とお薦めして、しばらく漢祥院へ通われていたそうです。
その後、蓮風先生から近くのお弟子さんのところを紹介していただき、そこにずっと通っているとのことでした。
1年前のカルテを見ると、私の見立ては「心腎不交と腎虚」でした。
今日の顔色は明らかに腎虚・肝鬱で、衛気も弱めです。
学校でも授業中、すぐに口ポカンとなって勉強に集中できてないので、ちゃんと病院で診てもらってきてください、と担任から言われたそうです。
なるほど・・・これじゃぁ口ポカンになるわ。
この方、いろいろな事情からの心因反応&ストレスもかなりありそうでした。
背候診では神道(GV11)に実邪が、右心兪(BL15)に虚邪がデンと居座っていました。
腹診では、一見すると腎虚なしに見えますが、よ~く感じてみると腎虚がありました。
両側の大巨・天枢・滑肉門に虚邪がウツボのように潜んでいました。
また、右>左で陽明胃経・厥陰肝経・少陽胆経の疎通が弱くなっていました。
なるほど・・・もう一度、臀部を診ると、右胞肓(BL53)に強い虚邪が潜んでいました。
これや!(蓮風先生のマネ(;^^)ヘ..)
実は漢祥院の研修で、ネフローゼの子供の置鍼を何度も見せていただいて・・・ピーン!と来たわけです。
心因反応&ストレスから肝鬱気滞となって、腎から昇ろうとする生気が季肋部辺りで邪魔されて、心神を養う生気が不足気味となるために、集中力低下と口ポカンとなるのでしょう。
陽明胃経も厥陰肝経も少陽胆経も顔を縦横無尽に走っていますからね。通りが悪くなると顔面筋もだらけちゃう。
腎虚(腎陽虚>腎陰虚)は元々の体質でしょう(兄も夜尿症が続いてます)。夜尿症が治らないのは、経絡阻通の心腎不交から夜間の津液を捌ききれなくなるためでしょう。もちろん心因反応も加味しています。
さて、どうしたものか・・・・
最初、漢方の師匠へ紹介しようかとも考えましたが、弁証してみて・・・う~ん、漢方ではムリかしら。
お薦めは、おぐすり灸・・・そう、昔ながらの大きなお灸;打膿灸が脳裏に浮かびました。
元々の腎虚な体質を一度、ドカン!とリセットしてみるのも手だなっと。
というわけで、今日のところは、右膏肓へ置鍼して、へそ灸で大巨~滑肉門のうつぼを追い出して・・・の施術をしました。
さて、結果はどうかな?
私だったら、このまま膏肓か膀胱兪の置鍼+へそ灸で押し続けるでしょう。
戦に例えるなら、今は邪気が籠城戦に持ち込んでいるわけです。
邪気が立て籠もる城の前は広大な沼地となっていて、こちらの軍勢は足をとられてしまい、なかなか敵城に取り付けない状況なわけです。
まるで日露戦争の旅順要塞攻防戦ですね。
無策な突撃を繰り返しても・・・敵城は堕ちません。
へそ灸は沼地を埋め乾かします。
膏肓や膀胱兪の補鍼は、味方に強力な機甲師団を増援します。
あとはひたすら砲弾を撃ち込み続けて、勝機を見たら果敢に突撃するだけです。
心因反応は、さながら敵のゲリラ戦です。
うまくいきかけては邪魔されることが繰り返されるでしょうが、それは末事。
いちいち気を取られないで、戦の本筋を見続けなければ勝てません。
敵城が堕ちれば、すべてが終わるのですから。
そんなことをいろいろ考えさえてくれた症例でした。
前世物語
美子レポート
妻の病気の意味
昔々、東京の下町に、いつも野球帽をかぶった少年がいました。ひとし、と言います。
ひとし君はさびしん坊でした。いつも石をけって帰って来ました。大きなランドセルが黒いカタツムリに変身します。
ひとし君の夕食はいつも仏さまと一緒でした。ちゃぶ台が野球場のように広がります。彼はキャッチャーが得意でした。
夜遅く、お母さんが帰ってきました。お母さんは女工をしていました。ひとし君はお母さんが大好きです。優しい目をしたお母さんは「今の妻」です。
今夜、彼はお母さんに頼みました。
「一緒に寝て欲しいなぁ」
でもお母さんはとても忙しいのです。ひとし君はお母さんのニコニコした顔を見ながら眠ってしまいました。
「だって仕方ないもの・・・」
朝、ひとし君は一人で起きました。もうお母さんは出かけていません。彼は一人で食事の支度をしました。お母さんは近所でも評判の働き者です。そしていつもニコニコしていました。
ひとし君は大学生になりました。今日は入学式です。彼は新しい学生服と大学帽をかぶっています。お母さんもきれいな着物を着ています。二人が門の前までやって来ました。彼はお母さんに何か言われました。怒られているわけではありません。でも彼は思いました。
「ごちゃごちゃ言わないで欲しいなぁ。そういうの、嫌なんだ」
ひとし君はとうとうお母さんに言い返しました。そして怒って一人だけで門の中へと入って行ってしまいました。
その夜、彼が家に帰るとお母さんが黙って座っていました。ニコニコしていません。彼も黙って座り込んでしまいました。
ある時、大学生のひとし君は流感に罹りました。身体が寒くてたまりません。どんどん衰弱していきます。お母さんが心配そうに見ています。彼は思いました。
「もう死ぬのかなぁ・・・。お母さんに何も出来なかった。何もしてあげれなかった。これじゃぁ、生きてきた意味がなかったよ。何にも成しえなかったよ」
お母さんが励ましてくれます。
「ひとし、がんばりなさい」