2014年4月6日日曜日

おはようさん 2014.4.5.

今日も今しかできないお話を 桜を語りましょう。 桜の写真って・・・私は難しいと思っています。 これほど大勢の人たちから撮られに撮られた花はないんじゃないでしょうか。 だから何を撮っても、どこかで見たことのある写真になってしまいます。 桜さんは近寄ってもよし、遠くから撮ってもよし、 背景が空でも、夜の帳でも、神社仏閣でも、菜の花畑でも、小川でも、町並みでも・・・何でもよしです。 だから・・・難しい。 モノクロで撮る・・・もっと難しいです。 だけど・・・春になると撮りたくなります。無性に撮りたくなる。桜を撮らないと一年が止まってしまうように感じてしまいます。 そして撮り終わって・・・他の花や紅葉のように、うまくとれなかったと凹むことがありません。 それは、桜さんの写真を撮ることよりも、ファインダーを通して今年も桜さんと真剣に向き合いたいからなんだなって気づきました。 魚眼レンズで数センチまで近づいても、標準レンズで普通に撮っても、望遠で浮かび上がらせても、桜さんはいつもニコッと微笑んでフィルムに収まってくれます。 蕾でも、五分咲きでも、満開でも、散り始めでも、花筏でも・・・桜さんはやっぱり微笑んでくれています。 だから、桜さんが好きなんだろうな。 愛してるというよりも、好きっていう言葉がしっくり来ますよね。 そう、アイドルや俳優といった高嶺の花の人たちが好きっていう好きじゃなくって、 弟が好き、お姉さんが好き、お母さんが好き、おじいちゃんが好き・・・そんなごくごく身近な、まるで自分の一部のような、なくてな生きていけない空気のような存在への感謝と慈しみを込めた好き!だと思います。 日本人のDNAに染み込んだ桜さん。 私という存在の一部なのですね。だから毎年、会わなくちゃ・・・冬を越えて、生きている確認をしに行きたくなるのでしょう。 だから、桜の写真を見れば、それを撮った人の人となりもわかってしまうのですね。 自画像 セルフポートレイト 自分撮り・・・桜の写真と同じように難しいですが、なるほどねぇと気づいた今夜でした。 さぁ、明日は春の嵐やけど、古都の桜を撮りに行こうっと。 前世物語 美子レポート     裏切り  昔々、播磨の国に、ひこざという男がいました。彼はいつも木刀を持って町を闊歩していました。  二十五歳の時、武士になるためのテストが城で開かれました。ひこざは自信にあふれています。城の中には若者が大勢集まりました。侍大将が、お前たちの部隊を作る、と言っています。ひこざは高揚した気分です。彼はとても強いのです。  ひこざが部隊長に任命されました。みんな白い鉢巻きをしています。侍大将がひこざに命令しました。 「敵の殿様を松林で待ち伏せしろ。必ず斬ってこい」  ひこざが先頭に立って月夜の中を松林へ向かいます。彼は部隊を二手に分けて草むらに隠れさせました。  しかし、いくら待っても誰もやって来ません。若者たちはイライラし始めました。 「ひこざ、お前、間違えたんじゃないのか」 「いや、オレは間違えていない。確かにこの時間に、ここに来るはずだ」 「この襲撃に失敗したら、オレたちはまずいことになるぞ。ひこざ、お前の責任だからな」  ひこざは答えました。 「いや、もう少し待ってみよう」  しかし誰も来ません。  部隊の誰かがいきなり彼を突き飛ばしました。 「お前はウソつきだ」  それを合図に若者たちは彼を袋だたきにしました。意識がもうろうとしていきます。 「オレは確かに指示を聞いたんだ。オレが悪いんじゃない」  ひこざは近くの冷たい沼に捨てられました。 「ああ、冷たい・・・。みんな仲間だと思っていたのに・・・。オレが悪かったのか・・・。なぜなのか、わからない・・・」  ひこざはとぼとぼと帰りました。とてもムシャクシャしています。  貧しい藁ぶきの家に入りました。若い女性が待っていました。なみ、と言います。ひこざは何も言わず、あぐらを組んで座りました。彼はずっと考えています。 「なんでこうなったのだろう。オレは裏切られたのか・・・」  なみがお粥を作りました。ひこざは流し込むように食べました。そして酒を飲み干しました。 「誰も信じられない・・・信じられない。信用してたのに・・・裏切った・・・誰も助けてくれない。 自分でやるしかない・・・」  ひこざは立ち上がって出て行きました。裏切り者たちを斬りに行くのです。  城近くに若者たちの長屋があります。ひこざが戸を開けました。あいつがいます。一番ひこざの強さを憎んでいたヤツです。  ひこざは斬りました。少し怖くなりました。 「ああ・・・みんな斬ろうと思ってたけど、もうやめた・・・」  ひこざはぼう然と血だらけの刀を見つめます。 「オレは今まで人を斬ったことなどないんだ。戦ったけど人を斬ったことはなかったんだ。こんなふうに斬れるなんて思わなかった。ヤツはまだ動いているぞ。怖い・・・」  ひこざは長屋を飛び出しました。 「オレはもうどこにも戻れない。なみのところにも戻れない。死ぬしかない。こんなことをしたら、もうここでは生きていけない。オレは死ぬ」  そしてひこざは腹を刺しました。