2014年2月1日土曜日
おはようさん 2014.1.31.
在宅医療で診ていた肺の悪いお年寄りが腸閉塞になって救急病院に入院しています。
元気になってきていましたが、腸閉塞が再発して二度目の緊急オペとなって1週間後の今日、連携医療システムでICUへ往診してきました。
意識はかろうじてありますが、肺不全が著しく人工呼吸器で加圧呼吸していました。
ものすごく苦しそうで・・・
丹田に金の鍉針を翳して補法してみると・・・全く反応しませんでした。
氣を入れても、真空の宇宙空間に空気を放出してるように、まるでもう身体がないかのようにすり抜けて拡散してしまいました。
腹診してみると、ひどい腎虚で生命力が尽きかけていました。
わずかに肝相火に虚火が残っていましたが、肺から心に向かって虚熱が浮いているだけで。
両肺に手を翳してみると、湿熱湿痰の末期でした。この肺の湿熱湿痰を呼吸器で加圧しているためでしょうか? 百会に分厚い湿熱湿痰がこびりついて百会を塞いでいました。
体温計では38度前後の熱ですが、それは虚熱・・・まるで蛍火のような空ろさでした。
「意識は時々戻ります」とICUナースさんの話でしたが、それはもうほとんど魂が抜け出てしまっているということでしょう。苦しそうな目に神はもうありませんでしたから。
人魂って、この蛍火が身体から抜け出て彷徨っている状態なんだなって思いました。
ただ、この蛍火=魂ではないこともよくわかりました。
ICUナースさんにunfavorable pattern / syndrome 逆証に陥ってしまったので、もう二三日しかもたないでしょうと告げて、もう一度、患者さんにお別れを言ってICUを後にしました。
蓮風先生がよく「逆証に陥ったら何をしても救えない」とおっしゃいますが、開業医しているとなかなかそういう場に出会いません(病院勤務時代はよく診ましたが)。
長いつきあいだった患者さんだったので、最後に「逆証」を見せてくださったような気がしています。
補法の鍼へのあの空ろな感覚をしっかりと覚えておきます。
前世物語
美子レポート
伴侶の死
昔々、京の都に「やよい」と言う若い女の人がいました。今日もお寺の境内で「のぶさん」とお話をしています。石段にしゃがみ込んで、楽しそうに話し続けています。彼は「今の夫」です。日暮れまでおしゃべりが続きました。やよいは穏やかな気持ちで、のぶさんと別れました。
町家の木戸が見えます。
「おかえり」というお母さんの声が聞こえます。お母さんは座って針仕事をしていました。お母さんは「今の母」です。やよいはお母さんと二人で暮らしていました。
今日あったことを楽しそうにお母さんに話しました。夕食のお魚が笑っています。
やがて、やよいはのぶさんと結婚しました。彼女は機織りをしています。
やよいが手を休めました。のぶさんはやよいのそばに座って話をしています。
「お茶がおいしいねぇ」
温かい幸せが二人を包みます。
車を引いている人が荷物を落としました。夫が行って、それを拾ってあげました。
春日和の一日です。
のぶさんは海岸に座って魚釣りをしています。彼は漁師です。
夫が帰ってきました。やよいが食事の支度をしています。時がのんびりと流れます。
食事の後、のぶさんは寝転がって話をしています。やよいはそばでお茶を飲んでいます。
夫がたばこを吸っています。夜の闇まで微笑んでいました。
時が過ぎ行き、のぶさんは五十七歳で死にました。やよいは悲しみに沈みました。
「また、いつか会いたい・・・。また夫婦になって一緒の仕事がしたい・・・」
やがて、やよいも六十七歳で死を迎えました。孫が看取ってくれました。とても安らかな気持ちです。
穏やかな人生でした。