2013年6月5日水曜日

おはようさん 2013.6.6.

癌の術前化学療法がワンクール終わって、自宅に帰されてきた患者さんを診ています。 嘔気・食思不振・全身倦怠感・ふらつき&歩行困難・・・癌はかなり小さくなって全摘手術が可能になったけど、体力&氣力がバテバテです。 ひと昔前だったら(or 政治家・高級官僚・大金持ちだったら)こうやって一度、自宅に帰らされることなく、そのまま入院させてもらえたかも??しれませんが、これが今の医療費削減下の現状だから仕方ありません。 最前線の現場としては、やれることを精一杯がんばるだけです。 何千億円もの円借款をチャラにしたり、アフリカに数千億円もホイホイと貸し出したり・・・のニュースを聞く度に、この国の国民総幸福度は前から・後ろから何番目なんやろう?? と悲しくなります。 (そうしないと、大企業の国際的な新規顧客争奪戦に勝てないことも、輸出が国富なことも分かってますが、大東亜共栄圏な戦争時代とよく似てきたように・・・感じてしまいます) その癌の患者さんの自宅まで往診してきました。 往診時の持ち物は、血圧計・体温計・聴診器・採血用具・・・くらいなものです。 携帯型の心電図系や超音波エコーも販売されていますが、高嶺の花で手が出ません。(今の診療報酬では永遠に買えないでしょう) 買えないというよりも、あまり必要を感じていません。 状態を伺って、検温・血圧測定・胸腹部の聴診して・・・ そこからが普通の内科の先生と違うところです。 顔望診・舌診・夢分流腹診・背候診・脈診(中医学&アーユルヴェーダで)をします。 抗ガン剤は免疫系にさまざまな形で影響を残します。 漢方で言えば、気・血・津液のすべてのバランスをグチャグチャにしてしまいます。 普段は見られないような気・血・津液のアンバランスが現れます。 例えば今日の患者さんは、腎は虚中の実から虚へ変わりつつあり、脾はすでにひどい脾虚で、仕方なしに肝が実となり、肝火由来の気・血でやっと心を養っている様子でした。胃火も虚火で旺盛されていたけど、ここに来て持ちこたえられずにゲロゲロし始めています。(まるでアベノミクスですねぇ) 大学の化学療法専門の先生はそんなことはわかりませんから、精神的な原因!(なぜそう結論したのかは???のままだけど)で抗不安剤が処方されていました。 顔貌診・舌診・腹診・背候診・脈診で、過去の病気の推移も近未来の予後も分かります。 今は持ちこたえてるけど、明日は危ない・・・とか、今は死にそうに悪い状況だけど、明日からは何とか持ち直してくる・・・とかがわかります。 もっと言えば、この人は生きたいという氣力が強いから何とかなるかもしれない・・・とか、 この人はもう諦めてしまっているから生命力:プラーナが消えかけてしまっている・・・とか、 この人は内なる怒りが強すぎるから癌よりも感染症か腎不全でダメになりそう・・・とかが分かります。 癌の根本原因だって推測がつきます。 この人は子供の頃からずっと言いたいことが言えずに我慢してきたから、この癌になったんだ・・・、 この人はずっと大勢の人たちを騙してきたから、ここに癌が出来たんだ・・・、 この人の几帳面過ぎる性格が癌になったんだ・・・、 癌の根本原因は、本当にさまざまな人間模様を見るようです。 癌の治療の成否は、患者さんと家族・癌の専門医集団・家庭医のチームワークで決まります。 患者さんの治りたい・治したい氣力が一番大切です。 癌の専門医集団の最先端の知識もとても大切です。 家庭医はオーケストラの指揮者みたいなものです。(あるいはファンモンのDJケミカルなのかも) 癌の専門医たちはその道のプロです。その道では世界的・最先端の知識や技術を持っています。 でも、その道ではないところ・・・漢方や鍼灸や心身医学やスピリチュアルケアまでも高いレベルの知識を持っているとは思えません。(持っていると知らず知らずのうちに本人が誤解してしまうところが人間らしさでもあるのですが) 患者さんの治りたい・治したい氣力も、時間と共に諦めに変わったり、誰か&何かへの依存にすり替わったり、怒りに飲み込まれたり・・・そんな氣力の変化をいち早く感じ取り、励ましたり、諭すしたり、希望と勇気を与えたりすることも癌治療にとても大切です。 家庭医は癌治療のプロデューサーです。秋元康です。 やすす(=秋元康)がステージ上で歌い踊る必要はありません。 スポットライトを浴びて、歓声に包まれるのは患者さんと癌の専門医たちです。 (もちろん立ち位置ゼロのセンターは患者さんでなければなりません) 患者さんと家族を見守り、時には諭したり泣き言を聞いたりしながら、生命力&氣力を引き出していきます。 癌専門医たちをリスペクトしながら、彼らの気づいていない情報を共有したり、患者さんの想いを伝えたり、アレンジを変えてみたり・・・しながら、デジタルな治療をアナログな治療に和らげていきます。 家庭医にとって、一番うれしいのは、やっぱり患者さんの笑顔です。 家庭医はプロデューサーなんだなって、ふっと気づいた往診でした。