2013年6月29日土曜日

おはようさん 2013.6.29.

藤本蓮風先生のご紹介で、鍼灸OSAKA 109号 がんへのアプローチ を読みました。 藤本蓮風先生は、全身転移の末期癌でも日常生活を保ったまま何年も過ごせた症例をたくさん持っておられます。 しかし、鍼灸の世界は全般的に「鍼でガンが治るとは決して言うな!」の黒雲に被われているのがよくわかりました。 もちろん、本当は鍼灸がガンの緩和ケア以上の効果をあげられることを、鍼灸師の皆さんはよく知っておられることでしょう。 ただ、巷にあふれかえる妖しげなキャッチ広告と同じように受け取られることを、とても怖れているようでした。 日本のガンの患者さんが鍼灸を受けたいと思うのは、病院で余命数ヶ月宣言やお手上げ宣言を受けた後です。 西洋医学ではダメだ・限界だ、と宣告されて、仕方なしに・藁をもつかむ思いで、鍼灸に向かわれます。 東洋医学でも漢方治療は、西洋医学と同じ「薬」に行き着くので、ガンの主治医も漢方医も何となくコミュニケーションがとれます。 西洋医学の医者でも(漢方のこと・陰陽のことをよくわからなくても)ツムラのくれた漢方薬手帳をパラパラとめくって、あてはまる症状→漢方薬 の公式で漢方を処方できます。 病院の先生たちの漢方処方を見ていると、この先生は漢方の達人か・まったく何も知らないか のどちらかやなぁ・・・しばしば思います。 ガンの主治医さんが日本東洋医学会認定の漢方専門医でもあることなど・・・奇跡的でしょうから、ガンの患者さんたちが飲まされている漢方薬は、果たしてどれくらいの効果なのだろう? と悲しくなることがあります。 漢方専門医の先生のカルテは、普通の西洋医学の先生たちが見ても???なことばかりです。 脈診・・・それって不整脈があるかどうかを診てるの? 腹診・・・腸管の動き具合を聴診器で聞いたり、押さえて痛いところ・気持ち悪いところを探してるだけでしょう? 舌診・・・??? 舌に何かあるんですかぁ? そして決定的に異文化なのは・・・ 肝鬱??・・・肝臓がどうしたの? 脾虚??・・・脾臓なんて血液のプールだけじゃん? 腎陽虚??・・・BUNとクレアチニンでいいんじゃないの? 血虚・・・これはわかりますよ! 貧血のことでしょう! 津液??・・・ ・・・(無言)・・・ 気虚・・・科学的にないことはお互いのため、スルーしときましょうね・・・ 漢方の専門医は、医者である以上、医学部6年間にみっちりと西洋医学をたたき込まれてきます。 例え、卒業後すぐに漢方専門の道へ進んだとしても、医師国家試験に合格したということは、その時代の最低限の西洋医学的知識は持っているということです。 語学に例えれば、日本語&英語のバイリンガルなわけです。 だから、漢方医には西洋医学の先生がたのカルテも読めるし、会話も成り立ちます。 ガン治療と緩和ケアに漢方薬がしっかりと根付いてきた理由はここにあります。 さて、鍼灸はと言えば・・・ そもそも漢方薬治療と鍼灸治療はふたつでひとつの東洋医学のはずなのですが(日本東洋医学会の学術総会にはちゃんと鍼灸部門もあります)、経絡経穴が主になる鍼灸と漢方はフランス語と英語くらいの違いがあります。 腎脾肝肺心も陰陽も同じですから、お互いに迷うことはありません。 ただ、漢方医は経絡・経穴を読む(感じ取る)ことは苦手です。 脈診・舌診・腹診・望診・・・も同じです。(鍼灸よりもちょっと雑っぽいかな?) 違っているのは、腹診や望診の濃さと背候診や原穴診の精妙さです。 頭で考えるよりも、まず自分の手:指と労宮で患者さんの気と穴の具合を詳細に感じ取れなくては治療に到りません。 そして、鍼灸医の書くカルテには漢方医もチンプンカンプンな経穴経絡名で埋め尽くされています・・・漢方医にもわからないものが西洋医学のドクターにわかってもらえるわけがありませんね。 ここにガンの主治医と鍼灸医の深く広い谷があるのです。 言葉が通じなければ、分かり合えません。 コミュニケーションがとれないままだと、お互いに助け合えません。 鍼灸の世界が何となくガン治療に後ろ向きなのは、このコミュニケーション不能に原因があるのだと感じました。 (ガンの患者さんが主治医に「鍼灸も受けてみたいのですが、先生、どうですか?」「う〜ん・・・どっちでもいいけど、紹介は出来ないよ」な会話になります) 日本では鍼灸師と医師だけが患者さんの身体に鍼・針を刺せます。 だからこそ、医師の方から鍼灸の世界に声をかけていけば、多くのガンの患者さんたちが救われると思います。 手っ取り早いのは、漢方専門医がマルチリンガルになってしまえばいいのです。 (→私は今ここ(*^^)v 蓮風先生はガン治療に関しても、とても前向きです。 豊富な実績と弁証理論が揺るぎない自信となって、鍼灸界を前向きに牽引されています。 すべては患者さんの笑顔のため です。 ならば、私たち 漢方医であり、西洋医学の何らかの専門医であるドクターたちが西洋医学と漢方治療と鍼灸治療のコミュニケーションをとる良き通訳になれれば、この国のガン患者さんたちのQOLと幸福度・生きがい度はグ〜〜ンとアップするでしょう。 これからがとても楽しみな鍼灸とガン治療です。