2016年9月23日金曜日
ごきげんさん 2016.9.23.
帯広の吉川正子先生に陰陽太極鍼を伝授していただいて1年が経ちます。
患者さまに実際に施術して、経絡治療の効果とその奥深さがよくわかりました。
陰陽太極鍼は、刺さない鍼です。
体表観察で感じ取った開穴に5mmほどの小さな鍼を置くだけです。
なぜ鍼を皮膚に置くだけで効くのか?
皮膚は脳と同じ外胚葉から生じます。
受精卵が胎児に発育していく過程で、皮膚の一部が陥凹して脳脊髄になります。
最近、「皮膚は第二の脳だ」と脳科学でも言われていますが、その根拠はこの発生学的ステップにあります。
皮膚は「外脳」として、多くの情報を発信・伝達・処理しています。
健康な状態には、開穴はありません。
病気になると、経絡に異常が生じて開穴が現れます。
開穴部は、経絡から五臓六腑を通じて、陰陽&氣血水のアンバランスを正すと共に、
脳に異常事態を知らせて、脳から臓器や免疫系、自律神経系などに防御&治癒の指令を発動させます。
開穴の反応は、軽く撫でると他より気持ち良い、くすぐったい感じがしたり、陥下、膨隆、発汗、冷感、熱感、硬結などで触知できます。
そんな開穴に小さな鍼を一本置くだけで、瞬時にして体表反応が好転します。
「右の病は左にとり、左の病は右にとる」(素問・繆刺論)
病を治すには、左右・上下・表裏の陰陽を整えることが大切だ、と中国4000年の歴史は語っています。
さらに面白いのは、上下・・・例えば頭の病は足の開穴で治す・・・経絡の遠位経穴を使うほど治療は強力になります。(根本根結理論)
これは鍼狂人 藤本蓮風先生の治療とも通じています。
「十二経脈は死生を決し、百病を処し、虚実を整える」(霊柩・経脈篇)
さまざまな病は、臓腑を起点として発現します。
経脈の異常を正せば、臓腑の異常も改善されて、病を治すことができます。
脳の表面には、顔・手・足・胴体・頭・・・指の一本一本まで、身体の各部位の感覚を支配している部位があります。
皮膚のデルマトーム(脊髄神経が皮膚感覚を支配している支配図)と脳のマッピングを繋げてみると、
皮膚の開穴に鍼を置く=脳の表面に鍼を置く ことになります。
神経解剖学的に、神経の繋がりがある脳表が反応していることもあります。
「氣」が流れる経絡と繋がる脳表も反応していることもあります。
脳に直接、鍼を置くことができる!って、すごいことです。
(脳外科手術では何度もやったことはありますが)
神経学的に、身体的な痛みや麻痺も良くなる可能性が大きいです。
免疫力や自然治癒力の源である氣も、脳ー経絡を介してバランスを整えれば、多くの病が癒されます。
脳科学と東洋医学。
一見、対極で相容れない世界のようですが、
西洋医学の知識と東洋医学の智恵をコネコネしていくと、
素晴らしい治療法と出会えるのです。