2013年10月14日月曜日

おはようさん 2013.10.15.

蜷川幸雄さん(ニナパパ)演出のシェークスピア「ベニスの商人」を堪能してきました。 開演前からいつもの蜷川マジックに納得しながら、幕が開けば舞台の左右・上下・前後をすべて使い尽くす演出に、いつもながら感動を覚えました。 シェークスピアの時代、ユダヤ人は悪人の代名詞だったのでしょう。 劇中に繰り返しユダヤ人非難の厳しい台詞が出てきました。 ヒットラーのずっとずっと以前から、ユダヤ人は慈悲のこころを持たぬ高利貸し、悪魔に魂をも売った守銭奴のように蔑まれ、嫌われていた・・・ユダヤ人たちの悲劇を改めてこころに噛みしめた作品です。 シェークスピアの時代から、すさまじい勢いで文明は進歩したけれど、人の悪しき心根は全然変わりませんね。 韓国人や中国人を訳もなく無分別に攻撃する輩が日本にもいます。 中国や韓国にも国家やマスコミに煽動されて狂人のように日本を攻撃する輩がいます。 イスラム教だから、キリスト教だから、ユダヤ教だから・・・ 同じ宗教でもシーア派だから、スンニ派だからと・・・ もっとちっぽけな単位でみても、あの家は母子家庭だからとか、あの家は夜のお仕事だからとか・・・ なぜこうも人は誰かを攻撃したがるのでしょうか? 「ベニスの商人」では、過剰なまでのユダヤ人攻撃と蔑み&嘲笑が最後まで続きます。 今回、ニナパパがそんな蔑み&嘲笑を表に見えるように演出したのは、悪しき生癖を誰もが内に秘めている人間の哀れさ、情けなさをギリシャ喜劇のように感じ取ってもらいたかったのではないでしょうか。 ベニスの商人はどこまでも正義と法を振りかざし、最後には正義と法に手痛いしっぺ返しをくらってしまいます。 こういう役人って結構いますよね。特に実力も才能も創造力もない木っ端役人ほど、正義と法と権力を振りかざして襲ってきます。(当院のHPを重箱の隅をつつくようにチェックしている役人や医*会なんぞ典型的ですわ)  本質が見えてないから、正義を突き抜いてしまいます。 制限時速ぴったりに走って、後ろは大渋滞。。。いるでしょう? 正義と法が剣なら、慈悲は鞘です。 振りかざしたら、鞘に収めなないと、いずれ我が身を切ってしまいます。 ベニスの商人では、何度も剣を鞘に収めるチャンスがありました。 しかし、できなかった。 怒り・恨み・憎しみの真の恐ろしさです。 怒り・恨み・憎しみにこころ焼かれている人には鍼も漢方も効きません。向精神薬も宗教も・・・難しい。 我が身を怒りの紅蓮の炎で焼き尽くして安息を得るしかありません。 ふっと狂人と化した我が娘のことを想います。 如何ともしがたい・・・人生は悲劇であり、喜劇なのです。 今回の「ベニスの商人」は主役の市川猿之助さんを観に来た人がほとんどでした。 (私はニナパパの演出目当てなので、幕が上がって・・・アレ? コノ人? でした(;^^)ヘ.. 会場は老若女女でいっぱいです。 そういえばニナパパは歌舞伎の演出も手がけたことがありましたよね。 市川猿之助をググってみると、代々、歌舞伎界の異端児だとか。 歌舞伎界も能楽同様に昔ながらの作品を伝統に則った形で上演されています。 昔ながらは守りながら、異端児が新しい歌舞伎芸に挑戦することでファン層を拡大しています。 老若女性のこころをつかめるイケメン俳優が、素人も楽しめる派手で煌びやかな衣装&演出で公演したり、時代劇やドラマに出演したりすることで、歌舞伎ファン層を広めていった成果を見たような気がしました。 狂言も同じです。イケメン狂言師の野村万作さんの公演もやはり老若女女でいっぱいになります。 能と狂言はペアーなのに、圧倒的に狂言の方が幅広い年齢層に好かれている現実があります。 野村万作さんの公演では、能のCM的なお話は一切ありません。 あくまでも狂言だけです。多分、万作さんを観に来た若い〜中年の女性層は能の合間に狂言が・・・なことなど全く知らないでしょう。 すでに世の中の「常識」では、能と狂言は別物になりつつあります。 これって能の世界の人たちにとって大きな&早く手を打たなければならない大問題じゃないかな? 華道の世界も同じでした。 昔ながらのお流儀で生ける生け花は確かに美しいです。でも普通の人たちにはわかりにくいし、生けるのも難しい。 今、花を生けるといえば、フラワーアレンジメントが主流です。 生け花を習う人より、フラワーアレンジメントを習う人の方が断トツに多いでしょう。 生け花展には綺麗な着物を着たさまざまな流派の女性たちが花を生けていますが、ある意味、コアなマニア化してしまっています。自己満足に浸っているだけの世界。 假屋崎省吾さんこそ、生け花界の異端児として新たな生け花界を創り出してくれると期待していましたが、いつのまにか・・・生け花という言葉からフラワーアレンジメントという肩書きに変わっていました。假屋崎さんの気持ち、よくわかります。 能も同じ運命を辿っているように思います。 これから5年、否3年の内に、能楽の世界からもイケメン異端児が飛び出して、新しい能を模索し始めないと・・・連休の二日間を繋げてみて、そんなことを思いました。