2013年7月21日日曜日
おはようさん 2013.7.22.
今日はいろいろな想いを込めて、「前世物語」に収録した過去生をひとつ、ご紹介します。
魂のつながり
二十世紀の暗い時代のウィーンに、フリードリッヒという男がいました。彼は哲学を教えています。町が平和な頃、彼はよくカフェで議論をしていました。
フリードリッヒの妻は、地味で清楚ですが楽しい人です。マリアと言います。
二人には子供が一人います。ルイーズという栗毛のかわいい女の子です。
ある日、ナチスが侵攻してきました。社会が混乱しています。講堂の中でも、誰かが演説しています。フリードリッヒは、それを聞きながら、悲しみに沈んでいました。
「このままじゃダメだ」
群衆が騒然としています。彼は群衆にモミクチャにされながら、外へと押し出されました。
フリードリッヒはドイツ人です。でもマリアはユダヤ人でした。町は騒乱状態です。
彼の友人にも、ナチスに狙われているユダヤ人が、たくさんいました。彼は、なんとか助けたい、と思っていました。しかし、実際に行動に移すと、自分までもナチスに狙われてしまうので、そんな勇気は出ませんでした。
彼の目の前で、妻が助けを求めています。マリアもナチスに連れていかれそうです。
「どうしたらいいんだ!」彼は叫びました。
ルイーズが、お母さんがいない、と彼にすがりついて泣いています。
彼は「ともかくお前は逃げろ!」と娘に言いますが、娘は手を放しません。
「ダメ!お母さんを探して!」
フリードリッヒは、もうどうしていいのか、わからなくなりました。
「ともかく、ここを逃げ出そう!」
でも、娘は動きません。仕方なく、彼は騒乱の中へ、マリアを探しに行きました。
喧騒の中、フリードリッヒはナチスの司令官と言い争いをしています。軍人が彼を殴りつけます。彼は首を絞められました。「逃げ出さなくては・・・」
フリードリッヒは、散々殴られ、痛めつけられながら、娘のところへ戻りました。ルイーズは泣いています。マリアの行方はわかりません。娘が父を励まします。でも父はもうクタクタです。
「じゃぁ、私が自分でお母さんを探すわ!」
ルイーズが、騒乱の中へ行こうとします。フリードリッヒは、娘を呼び止めました。
「とにかく、この娘を逃がさなくては・・・」
父は娘に絶望的な約束をしました。
「お母さんは、私がきっと探し出すから、大丈夫だよ。お前はチェコのおじさんの所へ行きなさい」
彼はルイーズを汽車に乗せました。もう娘に会えないような気がします。
フリードリッヒは、どうしていいのか、わかりません。「私は哲学をやってきたけれど、それが全然、役に立っていないじゃないか」彼は、絶望していました。
彼は銃を手に入れました。そしてナチスの司令官の所へ交渉に行きました。
「妻を返してくれ!」
軍人は全く取りあってくれません。フリードリッヒは銃で脅しました。
彼は逮捕されました。
「お前が反逆思想を持っていることは、前々から調べがついているぞ。反逆罪だ。お前は収容所で銃殺だ」
妻に会えないまま、フリードリッヒは収容所に送られました。
彼は後ろ手に縛られたまま壁の前に立たされます。
「どうして、こんな目に遭うんだ。助けてくれ」
ナチスの司令官がガムを噛みながら、三人の兵士に指示を出します。
兵士たちが銃を構えます。
「決してこんなことは、許されないぞ!」
彼は撃ち殺されました。その時、彼は決心しました。
「全体主義的なことには、どんなことがあっても反対だ」
「私」は彼の魂に尋ねました。
「身体を離れましたか? フリードリッヒさんはどうなりましたか?」
「下に見えます。口から血を流して、縛られたまま倒れています」
「死んだ瞬間に、何か決心したことはありますか?」
「さっきのことくらいです。家族にどうしても会いたいです」
「あなたを迎えにきてくれた存在を感じますか?」
「まだ、そこに残っています。妻と娘がどうなったか、心配ですから」
「では、妻のところに行ってみましょう。行けますよ」
「凄く狭いところに押し込められています。男女ごちゃ混ぜです。あっ、貨車の中です」
「妻にあなたが死んだことを伝えましたか?」
「今、話しかけて、気がついてくれました」
「妻は、どうしていますか?」
「ひざ小僧をかかえて、じっとしています。私のことは、全然心配いらないからって。ずーっと一緒だからって」
「それからマリアはどうなりましたか?」
「収容所の中で死ぬだけです。でも、騒がずに、淡々と自分の死を受け入れようとしています。彼女は、死んでからも魂が残ると強く信じていたので、こうして私と話が出来ます。マリアはまわりの人たちを慰めています」
「それから、どうなりましたか?」
「・・・話をしています・・・。次ぎも会えるかなぁって、私は駄々をこねています。でもマリアは、あなたは私に頼り過ぎるからどうしようかなぁ、って笑っています。マリアはまだ生きてるんだけど・・・。私は、必死で頼んでいます。・・・あんまり私が駄々をこねるものだから、仕方ないからって頷いてくれました。でも、今度会うのはすごく遅くなるから、それまで待っててねって言っています」
「それから、マリアはどうなりましたか?」
「ひとりだけで銃殺されます」
「なぜ?」
「どうも、収容所の中で、他の人たちを助けようとして、軍人に反抗したようです」
「どんな反抗をしましたか?」
「口汚く罵りました。いつもそんなふうだったので、見せしめにされます」
「銃殺されるマリアに、何と言ってあげますか?」
「偉かったね。いつもみんなを励ましていて。死を恐れていません。よく頑張ったねって」
「マリアは何と言っていますか?」
「あなたも本当はね、これだけの力があるのだよって。・・・二人は幼馴染みだったようです。二人のことをザッーと思い返していて、自分はどうしたらいいのだろうってマリアに聞いています。・・・あなたを次ぎは助けてあげられるわ、どういう形かはわからないけどって言っています」
「マリアの死の瞬間に何を思っていますか?」
「横で見ているのは悲しいことではないですね。よく頑張ったねっていう感じです」
「マリアは殺されましたか?」
「はい」
「彼女の魂はどうなりましたか?」
「頭の後ろから抜け出してきました」
「死んだマリアは何と言っていますか?」
「ほら、会えたでしょって」
「銃殺した兵士たちをどう思いますか?」
「別に何も。彼等も時代の犠牲者なのですから、仕方ありません。マリアもそうです」
「では、貨車の場面に戻って。娘のところに行ってみましょう。ルイーズはどこにいますか?」
「田舎にいました。泣いてます」
「では、娘にコンタクトをとってみて」
「話しかけたら、死んだのが伝わって、わーっと泣き出しました」
「あなただとわかってますか?」
「はい」
「その後、何を話しましたか?」
「全然、悲しむ必要はないんだよって」
「その後、娘はどうなりましたか?」
「・・・ずっと生き続けたようです」
「死んだマリアと一緒に娘の所へ行きましたか?」
「行きました」
「マリアが死んだ時、ルイーズは母の死がわかりましたか?」
「その時は、ルイーズは大丈夫でした。マリアが力強く話したので」
「私」は二人の魂を高みへと導きます。
「では、上に高く高くあがります。高くあがったところから、フリードリッヒの人生を見てください。そして、何か気がつくことはありますか?」
「弱虫なんです。上へあがってきても、マリアのことを探しています。マリアはとても強いです。私は人生でのいろんな出来事が見れません」
「私」は更に高みへと導きます。
「では、もっともっと高く高くあがります。そして、フリードリッヒの人生と、今のあなたの人生を平行に並べます。二つの人生を見比べます。そして、何か気がつくことはありますか?」
「マリアが、しっかりと自分の人生を見なさい、って言っています。さっきよりは、見えるようになりました。・・・前の人生では、とってもマリアの力に頼っていて、自分で立てなかったけれども、今度の人生は出会いが遅いので、自分でしっかり歩かなくてはいけません」
「私」は光へと導きました。
「光が近づいてきました」
「その光の中へ入ります。どんな感じですか?」
「すごくさわやかな感じです」
「そこに誰かいますか?」
「とても大いなる知性のような男の人がいます」
「では、その人に聞いて下さい。今回の私の人生の目的は何ですか?」
「十分に時間をかけて、ゆっくりと身につけることです」
「何を?」
「知恵だけど・・・言葉で説明出来るものではありません。知恵。勉強して身につけるものではありません」
「では、どうやって身につけるのですか?」
「いろんな人に出会って、いろんなものに心を開いて、あきらめないことです。すごく時間がかかるものですが、あきらめなければ、向こうからやってきます。今はまだダメです」
「ということは、私の人生はここまでダメなのですか?」
「まだまだダメですねって」
「何がダメなの?」
「あなたは自分のことしか考えいません。しっかりと守られてるのだから、あなたのまわりの人たちを、あなたの方から助けてあげることを学びなさい」
「その方に、もうひとこと、メッセージをください、ってお願いします」
「落ち着いて学びなさい。きっと時がきますからって言っています」
そして私たちは光のもとを離れて、今、この時へと戻ってきました。
書きたいことが山のようにあるけど、
もうちょっと待て、今は待て、と天の声も聞こえてくるので、今日はすべての想いを飲み込んでおきます。
今日の症例の解説はまた後日。お楽しみに。