2011年1月22日土曜日

うつの中医治療

漢方専門医の更新用症例報告を書いてます。ちょっとおすそわけです。
鬱証の中医治療
陰虚火旺の鬱では、肝腎陰虚のため虚火が上炎しイライラやのぼせ(血圧変動感)となる。陰虚から虚熱が体内に生じると心神に及ぶ不眠となる。虚火はまた精室に及び精関不固に陥り男性疲労感となる。
 滋水清肝飲は「医宗己任篇」の「滋阴养血,清热疏肝。治阴虚肝郁,胁肋胀痛,胃脘疼痛,咽干口燥,舌红少苔,脉虚弦或细软。」を原典として、滋陰清熱、鎮心安神に働く。生地黄、山薬、山茱萸、牡丹皮、茯苓、沢潟は六味丸組成で肝腎の陰を補う。白芍、当帰は陰血を補う。山萸肉、柴胡は清熱疏肝作用がある。酸棗仁は補肝養血、寧心安神作用がある。知母、杜仲、牡蛎は強腎摂精に働く。
 気滞湿痰の鬱証は肝気が痰に幽閉され抑鬱を生み、痰と気が胸膈上部に欝結すると梅核気となる。気の昇降出入が痰湿に阻まれると胸悶を生じ、肝経が鬱滞すると胸痛を生む。気滞湿痰の鬱証には半夏厚朴湯を処方する。
 心脾両虚でも心脾損傷から気血不足となり不安感、全身倦怠感、不眠を、脾の運化低下は食思不振を、気血不足は全身倦怠感と顔色不良を生じる。心脾両虚の鬱証には帰脾湯を処方する。 心神失養では営血不足が情緒不安定や不眠、精神恍惚感を、気鬱が陽気を障害し悲傷啼泣となる。心神失養の鬱証には甘麦大棗湯を処方する。
 ストレス加重による気鬱化火では肝火旺盛でイライラや易怒感が憎悪し、足厥陰肝経を上炎して頭痛、顔面紅潮、目の充血を来す。胆に肝火が及ぶと耳鳴、口苦を生じ、肝火犯胃が胃腸に熱を生じ津液が消耗されると口渇や便秘となる。気鬱化火の鬱証には加味逍遥散を処方する。 
 肝気欝結では肝気の流れが障害され精神抑鬱や落ち着かなくなり、肝経の気の巡りが悪化して胸脇部脹痛や腹脹を生じる。肝気犯胃が胃脘部の痞え、噯気、食欲不振、嘔吐を生じ、肝気乗脾から肝脾不和となり排便障害を来す。肝気欝結の鬱証には柴胡疏肝散を処方する。