2018年5月5日土曜日

ごきげんさん 2018.5.5.

ひかりの経営(仮称)から ある経営者の過去生  なぜ私の人生はこんなに次から次へとどん底の苦労が続くのか? と悩まれていた町工場の社長さんの過去生です。  産業革命まっただ中のイギリスです。船1艘だけの小さな廻船業を営んでいる両親の長男に生まれました。  父も母も一日中とても忙しそうに働いていて、幼少期は祖母が面倒を看てくれていました。  両親の仕事は順調で、学校に通い出しても友人たちより少し豊かな生活をしていました。 「子どもの頃は幸せだったな」と少年の魂の声が聞こえてきました。  父の仕事を手伝うようになって、「もう1艘船を増やせそうだな」と普段笑わない父が嬉しそうに笑う姿を見ると、自分の未来がとても明るく感じられて、どんなに働いても元気いっぱいになれました。  町の実力者の娘とも恋に堕ちました。相思相愛で両親も大喜びです。ところが・・・季節外れも大寒波に襲われて、多くの船が沈没する事件が起こりました。父の船も大量の船荷とともに沈んでしまいました。一夜ですべてを失ってしまったのです。  膨大な借金を抱えた両親はふさぎ込み、やがて自死してしまいました。婚約していた娘はもう会ってくれません。結婚は破談になってしまいました。 「女は裏切るものだ」  彼は一生結婚しないと誓いました。 「もう絶対に船には乗らない」  昔の船員たちから何度も仕事の誘いがありましたが、彼はずっと海に背を向けたままでした。  教師となった彼は、淡々と教えるだけで何も自分を語らない日々を平々凡々と過ごしました。 「なんとかこんな日々から抜け出したい」  時々はそんなことを思うこともありましたが、年月を重ねていくうちに満足も不満も、怒りも希望もない日々がただ流れ去っていくだけになっていました。  50才になった頃、ロシアの貴族に英語を教えることになりました。船旅は嫌だったけど仕方ありません。蒸気船に乗って荒れた海へと船出しました。ところが・・・夜中の銃声で目覚めると、船は海賊に襲われて、船員たちは殺され、乗客たちは海賊船に乗せられてどこかに連れて行かれてしまいました。  海賊は乗客のひとりひとりに言いました。 「死ぬか? 奴隷で働くか? 選べ!」  口答えした乗客は容赦なくその場で殺されました。泣き叫ぶだけの女も喉を掻ききられました。   彼は死ぬのが怖かったので、奴隷生活を選びました。  海賊たちは、数カ国語を話せる彼を通訳として海賊船に乗せました。奴隷ですから一日中雑用でこき使われました。ただ海賊が獲物の商船を捕まえた時に、隠し金庫の場所や高貴な乗客の有無を船長に問いただす役目があったので、あまり殴られることはありませんでした。腫れ上がった顔やケガだらけの身体で乗客や船員たちの前に立つと、脅えてしまって何もしゃべらなくなってしまうことを海賊が知っていたからです。 「お前にケガはさせないぜ! ジェントルマンの方が安心してお宝の在処をしゃべってくれるからな。そのかわり・・・」  彼は海賊たちの夜の慰みモノにされました。  その夜も何人もの屈強な海賊たちにもてあそばれました。もう身体の痛みもこころの痛みも何も感じなくなっていました。海賊たちが寝静まって、彼は異臭の漂う床に投げ捨てられたままの姿で暗闇を見つめていました。闇の中から痛々しい呻き声が彼に向かって語りかけてきました。 「なぜお前は死なないんだ。奴隷はみんな自死するのに・・・。お前は何を待っているんだ」  彼はこころの中で答えました。 「私にはずっと希望も夢もありませんでした。自ら希望や夢を持とうとしませんでした。希望と夢を探そうとしたこともなければ、誰かの希望と夢に感動したこともありませんでした。  あの大嵐が私の幸せも希望も夢もすべて奪い取ってしまいました。あの時以来、私は過去を振り返ることも未来を見上げることも避けてきました。今も見たくないので、しっかりと目を閉じてきました。  私には何も見えていません。何も感じられません。何も要らない、誰にも関わりたくありません。  なぜ生きているのかって?・・・ただ死ぬのが怖いだけです。  死とは何かなんて知りたくもないけれど、ただ死にたくないだけです。  毎晩こうして男たちに腰を砕かれ腸(はらわた)を掻き回されても何も感じません。私の悔しさ、恥ずかしさ・・・怒りと憎しみはどこに消えたのでしょうか。  男たちの白濁にむせかえりながら、私は尚もこの身体の中にしがみついています。  悲しみも苦しみも、もちろん喜びもない私にどうすれば希望や夢がやって来るのですか。  私には今この瞬間に心臓が止まっておくれ!という希望さえないのです」  闇が叫びました。 「これを見よ!」 (つづく)